石田 智子
ISHIDA TOMOKO
ISHIDA TOMOKO
紙を使った制作は、1992年くらいから始まりました。そのきっかけは、結婚にありました。 生活の場は東北の山間部にある禅寺。結婚の時期も丁度戦後50年頃で、法事が多くとても忙しい毎日でした。日々何か形あるものを創るわけでなく、思考するでもなく、ただただ大勢の方の接客と境内掃除・食事支度に明け暮れておりました。そして、結果的に殆ど外出することもない生活になっていました。 そうなってみると、外から来る人や物の動線みたいなものを感じはじめたのです。毎朝必ず届く新聞、郵便物やいただきもの等、途切れることなくやって来ては消えていきます。私の周りでいつも物が動いているのです。もともと布を使って制作していたからでしょうか、繊維素材の動きが気になり、お供え物の包装紙に目がとまりました。この使用済み包装紙達はとても丈夫で色が豊富でした。この紙を使って何か創れないか、と考えていましたが、集中力が必要な作業、場所を取る作業では、私がこの寺で暮らすということが成り立たないのです。そこで考えたのが、単純な作業の繰り返し。最初はどうなるのか見当もつきませんでしたが、日記を付けるように、一瞬々々の私を刻みこむように紙撚を作りはじめました。 紙撚なら大量に作っても保管に場所を取らない、一作業が十数秒でキリがつきます。というわけで、その時の条件を満たしたかたちでの制作が始まったのです。さまざまな処からやって来た紙が私の手の中で撚られ、そしてその作られた紙撚が手を離れ、新たに人と出会ったり、また私に語りかけるようにもなりました。 「我々はあなたの時間そのもの、心そのもの、そして様々な出会いそのものなのです。」 「私達の中にはあなたの全ての不平も、祈りも夢も、つまりあなた全てが含まれているのです」 それらはけっして一様でなく特定の私を表しているのではなく、全ての人々に共通する何ものかをあらわしているように感じました。 作品を制作するということは、生命を維持するのには全く不要の行為です。しかし私にとっては、日々のあらゆる自分を確認する行為であり、またそれを発表するのは、出来上がった物を見て頂くというよりも、むしろ今見てくださっているあなたと「共鳴したり、共振したり」したいという思いからなのです。
2005年1月 石田智子
略 歴
Biography
Biography
1958 | 大阪府生まれ |
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1982 | 京都精華大学美術学部染織科卒業 |
1991 | 福島県三春町・福聚寺に嫁ぎ、紙撚による作品制作を始める |
現在 | 三春町在住 |
展 覧 会
1983 | 個展(ギャラリー16、京都) 3人展「もののありかたを追求する」(道特画廊、札幌) |
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1884 | 多種多様態展(大阪現代美術センター、大阪) ファイバーアートミニアチュール展(ギャラリーマロニエ、京都/ワコール銀座アートスペース、 東京/スカイプラザ・クラフトV、石川/ NAA ギャラリー、韓国) ワークショップ「縫う手と自分と縮む布」(真駒内青少年会館、北海道) |
1985 | 個展(有楽町西武ファブリックギャラリー、東京) |
1986 | 個展(ギャラリー16、京都) 日本現代織物造形展(台北市立美術館、台湾) |
1993 | ファイバーアート展「糸と布の可能性」(福島県立美術館、福島) 日本のファイバーアート展「光と影」(ノースダコタ州立美術館、アメリカ) |
1995 | 国際掌中新立体造形展(吹上ホール、名古屋) 個展(ギャラリーマロニエ、京都) |
1996 | 建築に挑むソフトスカルプチャー展「壁・X」(ワコール銀座アートスペース、 東京/ギャラリーマロニエ、京都) 「知的遊技」展(ギャラリーナノリウム、山梨) 「誓いと祈り」展(一関文化センター、岩手) 朝日現代クラフト展招待出品(阪急百貨店、大阪・東京) 個展(ギャラリーナノリウム、山梨) |
1997 | 現代作家立体小品展(ギャラリーマロニエ、京都/ワコール銀座アートスペース、東京) |
1998 | 第9回国際タペストリー トリエンナーレ(中央染織美術館、ポーランド) |
1999 | 個展(ジャンベルク市立美術館、チェコ) 個展(アートスペース21、東京) 4人展(ギャラリー人、東京) |
2000 | 個展(プリシード・ホワイエ、福島) 常設作品として出品(感覚ミュージアム《香の森》宮城) 第9回国際レース・ビエンナーレ:現代美術(衣装とレースの美術館、ベルギー) |
2001 | 第9回国際レース・ビエンナーレ:現代美術(ハイデルベルクテキスタイル美術館、ドイツ) |
2002 | エイブルアート「見えるもの 見えないもの 心のかたち」展( ビッグアイ、福島) 「ガラス & ファイバーアート展」(喜多方市美術館、福島) |
2003 | 個展(衣装とレースの美術館、ベルギー) 個展( ギャラリーナノリウム、山梨) |
2004 | 個展(ペーチ市美術館、ハンガリー) |
2005 | A MUSE LAND 展(北海道立近代美術館、札幌) The Common Garden 展(日本美術技術博物館 Manggha /中央織物博物館、ポーランド) |
2006 | 国際ペーパービエンナーレ・オランダ(CODA 美術館/ライスワーク美術館、オランダ) 個展(ギャラリーなうふ、岐阜) |
2007 | 個展(ギャラリーマスガ、福島) 東京芸大創立120周年記念公演 オペラ「白狐」( 岡倉天心作)舞台に設営 (旧東京音楽学校奏楽堂、東京) BIWAKO ビエンナーレ(近江八幡カネ吉別邸、滋賀) 風と土の芸術祭:会津美里町誕生記念(会津美里古商家、福島) |
2009 | 2人展(TOPOGRAPHIE DE L’ART、フランス) 「まち」がミュージアム!(ギャラリーナノリウム/富士吉田市内古民家、山梨) 博物館から覚醒するアーティスト達(福島県立博物館、福島) 個展(ギャラリーSUGATA、京都) |
2010 | 妙心寺展 梵鐘設営のための装飾(九州国立博物館、福岡) 個展(三菱地所アルティアム、福岡) 25年目の贈りもの コロー・ルノワールから郷土の美術家まで(福島県立美術館、福島) NEW MATERIAL WORLD(シェルダン美術館、アメリカ) 個展(ギャラリーSUGATA、京都) |
2011 | 個展(ギャラリーなうふ現代、岐阜) |
2013 | 個展(ギャラリー然花抄院、京都) 個展(ギャラリーナノリウム、山梨) 個展(茶庭 渋谷然花抄院、東京) |
2018 | “BUDDYZM” JAPAN Art Festival(日本美術技術博物館 Manggha、ポーランド) Islamic Art Festival “21th Session”-“HORIZON” (シャールジャ美術館、アラブ首長国連邦) |
2020 | 個展 雑華(郡山市立美術館、福島) |
受 賞 歴
1995 | 「国際掌中新立体造形展」準大賞(名古屋、日本) |
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1998 | 「第9 回国際タペストリー・トリエンナーレ」大賞、美術 館賞(ウッジ、ポーランド) リリアン・エリオット賞(フォートコリンズ、アメリカ) |
2000 | 「第9 回国際レース・ビエンナーレ」ファビオラ女王大賞(ブリュッセル、ベルギー) |
パブリックコレクション
Museum of Art and Design( 旧American Craft Museum) (ニューヨーク、アメリカ) | |
Museum of Costume and Lace (ブリュッセル、ベルギー) | |
感覚ミュージアム(岩出山、宮城) | |
西武百貨店(有楽町、東京) | |
福島県立美術館(福島、福島) |